こんにちは、STEAM Researchers 設立者の1人でもある、芳賀(ハガ)です。
私自身が進めるSTEAM教育のプロジェクトについて記事を書いていきたいと思います。
MUCHU-JIN Projectとは?
「MUCHU-JIN Project」は、学生が「自分らしさ」を見つけ、好きなことに夢中になり突き抜ける人になるためのサポートをする教育プログラムです。本プログラムは、21世紀を生き抜く力を育む「STEAM教育」の手法を取り入れた探求学習を通じて、ご参加いただく学生の皆さんが夢中になれるものに出会い、自分らしく生きるための道のヒントを得られるものとなっております。
では、なぜ「STEAM教育」に「キャリア教育」の要素を掛け合わせるのか、という理由をご説明したいと思います。
MUCHU-JIN Projectでは、プログラムの最初に「自分とは何か?」「自分の本当にやりたいこととは何か?」を発掘するところから始めます。自分軸の確立や目標の設定を行い、探求学習をおこなっていくのです。
それはなぜかというと、教育手法を実践することを最上位目標としたくないからです。
例えば、小学校での必修科目にもなり、注目を集めるプログラミング教育。
一般的にはプログラミング教育を受ける中で、子どもたちが何を作ろうかということを考えていくことになると思います。ただ、最初は興味本位で触っていても目的がわからず目標もない中で、何かを継続して行うことというのは苦になることがあります。
であるならば、最初からプログラミング教育を手段と捉えて、どんなことができるようになりたいのか、プログラミングで何を実現したいのか、ということを考えてもらった上で、プログラミングに取り組んでもらい、その中から学びを得てもらう方が良いと私は考えます。
MUCHU-JIN Projectも同様です。STEAM教育をやることを目的とはせず、明確な目標(自分のなりたい姿や自分の実現したいこと・やりたいこと)を設定した上で、探究をしてもらいたいという願いのものとに教育プログラムを作っています。
学生たちには「〜をしたい」という目標やビジョンを持ってもらい、その目標やビジョンを実現するためにMUCHU-JIN Projectという手段を活用してもらいたいと考えているのです。
それがMUCHU-JIN Projectという教育プログラムになります。
人生について悩むことは誰にでもあります。
「自分の存在意義とは何か?」「自分が本当にやりたいことってなんだろう?」「自分らしさとは何で、どこにあるのか?」とモラトリアムになる学生も少なくありません。
ただ、答えは行動しないと見えてこないものです。その問いへの答えを見つけるのが、MUCHU-JIN Projectなのです。
MUCHU-JIN Projectがどんな教育プログラムか(What)ということに続いて、具体的な教育手法(How)についてご説明します。
MUCHU-JIN Projectでは、私が4年という時間をかけて開発した教育手法「ASEDAS CYCLE」を用いて探究学習を行っていただきます。
これは、Artが生まれるプロセスに着想を得た、新しいSTEAM教育の理論であり、教育手法です。ASEDASは、Art・Science・Engineering・Designの4つの要素を循環する教育手法を元に名付けました。
この4要素は、MIT Media Lab 教授でありデザイナーである、Neri Oxman氏の「Age of Entanglement」であり、そのベースとなった、John Maeda氏の「The Bermuda Quadrilateral 」にあります。
Neri Oxman氏は「Age of Entanglement」の中で、時代の先端を行く個人あるいは組織において、一つの肩書きでは説明できない時代になってきている。Art・Design・Engineering・Scienceの四象限の境界を越える脱専門的(Antidisciplinary)態度がこれからの時代には必要だ、と唱えています。
この考え方は、21世紀を生き抜く力とされる「STEAM」に通づると私は考えました。「Age of Entanglement」の中「Krebs Cycle of Creativity」は、創造性を永続的に生み出すサイクルとして提唱されており、この理論を基盤に「ASEDAS CYCLE」というSTEAM教育の教育手法を開発しました。
ここで、重要になるのは、STEAMにおける「Art」をどう定義づけるかということ。
日本では一般的に「Art」をリベラルアーツとして定義づけることが多いです。2006年にGeorgette Yakman氏が「STEAM Pyramid」を提唱したことで、日本ではリベラルアーツの文脈で語られることが多いと理解しています。
一方で、ASEDAS CYCLEでは「Art・Design」という、自分の手で創造することと定義づけています。これは2008年、RISD(ロードアイランド・スクール・オブ・デザイン)に、John Maeda氏が学長として就任した際に演説したスピーチに起因します。
“Art and design are poised to transform world economies in the 21st century just as science and technology did in the 20th century.”
– John Maeda ,2008
私は3歳からアトリエでの創作活動を始め、後に横須賀総合高等学校という全国で受賞歴のある美術部に所属していました。高校の美術部では週7日の活動があり、美術漬けだったと言っても過言ではありません。そんな私の経験では、やはり「Art」において、アイディアや概念など形ないものを自分の手で具現化する力というのは、非常に重要な意味を持つと時間しています。なので、リベラルアーツに包括される哲学や倫理だけではなく、何かを生み出す力(創造性)が「Art」であると定義づけたのです。
「Krebs Cycle of Creativity」では、以下のように創造的エネルギー(Creative ATP)が循環をします。
これを元に、ASEDAS CYCLEにおけるArtの役割を以下のように位置付けました。主に、DesignからArtにエネルギーが渡る時、ArtからScienceにえねるぎーが渡る時、それぞれのフェーズに役割があると考えます。
DesignからArtにエネルギーが渡る時、利便性を追求し試行錯誤する中で「閃き」に近い進化(ジャンプ)によって価値の最大化が起きます。これを「イノベーションジャンプ」とします。
また、ArtからScienceにエネルギーが渡る時、これは自分の生み出したものを社会にアウトプットすることで問いを投げかけます。さまざまな社会のフィードバックを受けることで、自分の創造したものを客観視できます。つまり、このフェーズでは、自己言及と内省が起き、これが次のArt(自分起点の想い)に繋がることで循環すると考えます。それが、ASEDAS CYCLEであります。
ASEDAS CYCLEの特徴は、思考の拡散と収束を繰り返すことにあります。
一般的に、論理的思考やデザイン思考、アート思考などを用いた教育法には以下のような傾向があります。
論理的思考やデザイン思考は、どうしても共通の認識や共感に対して思考が収束しがちです。一方で、アート思考は、多様性への拡散が行われますが、広がったまま収束はしません。
ASEDAS CYCLEでは、この拡散と収束を繰り返すことで、拡散と収束、どちらの思考法も身につけることができます。
開講記念セミナー
MUCHU-JIN Projectの開講を記念して、現在全5回のセミナーを企画・実施しています。
第1回セミナーの動画と記事は次のリンクからご覧ください。
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