6月14日(月)の活動報告です。
当日の活動内容
今回は、STEAM教育への理解を深めるための研究活動の一環として、STEAM教育の論文を中心に事例を集め、STEAM教育の在り方をディスカッションしました。
高木さんからは、STEAM教育における音楽創作についての論文を共有いただきました。
出典|STEAM教育としての協調的な音楽創作活動とその評価の提案
STEAM教育プログラムにおけるプロセスの在り方
高木さんからは「STEAM教育における教育プログラムは、大人が正解を用意したり、知識をもとに軌道修正をかけることが必要なのか」という問題提起をいただきました。
①音楽を自由に作る→②音楽理論のインプット→③知識を元にブラッシュアップ
というフローを考えた時に、多様な到達点へ向かう活動の促進(Art-STEAM教育)の実現ができるのか、という点。主に②で「子どもの世界」を参考例をとして「主旋律に対して美しく響く副旋律(ハモリ)をつけよう」という投げかけが見られる。
大人が用意した正解を見せることで、創造性に制限を課すものになるのではないか?という疑問が出た。経済産業省「未来の教室」が目指す姿の中でも語られる「学びのSTEAM化」及び「学びの自立化・個別最適化」、特に「学びの自立化」に繋がらなくなるのではないかと。
インプットを行うタイミングはいつが最適か?
問題となるのは、専門知識のインプットのタイミングであるという議論へ。
A. 最初に一律の知識をインプットした上で、自由に作る方法。
B. 或いは、最初に自由に作ってから、インプットを行い、再度ブラッシュアップする方法。
参考文献ではBのフローでプログラムを進めているが、Aのフローであれば「(大人の出した)参考例との答え合わせ」にならないのではないか、と。
大事なのは、教育目的あっての教育手段
芳賀より「具体的な手法を定めるには、教育目標(何のためにやるのか)が明確にする必要がある。」と提案。つまり、どんな学習効果を期待するから、何をどの順番でやる必要があるのか、ということを明確にすることで、最適な教育手法が生まれるのではないか、ということ。
STEAM教育を行う必要があるのは子どもだけ?
今回よりご参加いただいております清水さんからも、STEAM教育に対する見解をいただきました。清水さんは作曲家で、小さい子に触れる機会も多いとのこと。
「STEAM教育って、お子さんだけに実践していけば良いのだろうか?子どもの成長をサポートする親御さんの理解や意識を変える必要はないのだろうか?」と問題提起をいただきました。
「(幼稚園のお子さんが楽器を習いたいと言った時に)ギターやドラムが好きでも、それでは食べていけないからやるのをやめなさい」
「美大に行ったって、アーティストじゃ食べていくことなんてできないんだから、アートはやるべきではない」
そんな大人の声を時々耳にすることがあります。総じて「アートは職業に繋がらないから、やる意味が薄い・ない。/ アーティストは稼げないからやる意味が薄い・ない。」ということを暗に意味しているのではないかと思います。特に幼少期からのSTEAM教育は、親御さんがArtに対する必要性を感じていなければ叶わないでしょう。
「親の意識が変わることで、音楽や絵画などのアートに取り組むことを許容していく社会が実現できるのではないだろうか」と清水さんからコメントをいただきました。
具体的にはどうすればよいのか?我々、STEAM Researchersの中では「お母さん・お父さんと一緒にSTEAMを体感する」という教育プログラムの構築を目指していきたいという方針で全員一致しました。
今現在の風潮としては、Artはそれぞれの領域のプロだけに許された特別なものというイメージがあります。けれど、子どもも大人もArtのある生活が日常になれば、よりArtの民主化は進むのではないかなと思います。
STEAM教育においても同じことが言えるでしょう。
アーティストやデザイナーなど一部の専門スキルを持った人しかSTEAM教育を指導できない・してはいけないのではなくて、親御さんでも教員の方々でも、自分の得意なArtで各々のSTEAM教育を実践すればよいのではないか、と。そういった潮流(ムーブメント)を、まずは国内で起こしていければと考えています。
パーソナリティ x 環境で実現する
Artの領域で活動する人になれたのか、その共通点は何であるか、という議論に展開。当日会合に参加したメンバーのArtとの接点は以下のようなところにあります。
- 清水さん→作曲を本気で始めたのは、高校生の時。やるなら本気でやろうと打ち込んだ。
- 高木さん→勉強が得意な学生だった。作曲を習い、実践し始めたのは社会人になってから。
- 芳賀→3歳の時にクリエイターを志し、20歳で学生デザイナーとして仕事を請け始めた。
今でこそ、全員Artを職業にしたり、ライフラークとして取り組んだりしているが、Artを始めた時期も生い立ちもバラバラ。何が共通項となりうるのか?
清水さんは、自主的に課題を見つけ、取り組み、表現する力を伸ばしていった。
同じように音楽を学ぶ人の中には、言われた事しかやらずに、自分で課題を作り、毎日、コツコツと学ぶ事ができない人が多い。常に作り続ける、学び続ける、休息のときにはインプットを意識する事がArtを職業する事に必要という事。
芳賀は、元々過集中の傾向があり、Art以外のことにも前のめりで取り組んでいた。(小中学生から徹夜をして作品をつくることも。)ただ、それでもArtの道に進もうと思ったのは、自分の性質がArtとハマったから。時間や労力をかけるとそれに見合う結果が出ることが面白かった。
楽しいから好きなことに夢中になり、突き詰めることができる人もいれば、そうではない人もいる。これは、パーソナリティとArtがハマるかどうかという側面が大きい。経験者の見解として、Artへの向き不向きはあると意見が一致。
では、Artと相性の良い人なら誰でもアーティストや作曲家、デザイナーなどになれるのか?
先述の通り、Artに対する日本国内の大人の認識の多くは、Artを推奨していない印象だ。
Artは、職業に繋がらない、稼ぎに繋がらない、不確かなもの。
Artに取り組む学生において、私の時代にも多く、挫折した人がいた。多くの場合は、進学などを検討した時に、親の承認や支援が得られず、その先に進めないというケース。つまり、学生が身を置く環境(家庭環境・教育環境など)にArtが受け入れられなかったということなのだろう。
それが「大人のArtに対する意識を変える」必要がある、という話につながる。
つまり、Artをライフワークにするには、パーソナリティの適合とArtを実践し学び続けられる環境が必要であると、結論づけた。
次回の会合
6月28日(月) 14:00〜
参加をご希望される方は、下記のフォームから参加希望の旨をご連絡ください。
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